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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁

青空文庫

「いいえ、あの御両人ばかり悪いのじゃありません、もっと悪い人があります」

「それは誰だ」

「あの時に、どなたか知りませんが、物臭太郎のお茶屋に、狸寝入りなんぞきめ込んでいらっしゃったお方がございましたね」

「うむ」

「そのお方が、もう少し親切にして下されば、わたしも、こんなところへ来て、こんな生恥をさらさなくても済みましたのに」

「うむ――」

「ずいぶん、あの方はお若いくせに、薄情なお方でした」

と言いながら、女は兵馬の胸に面を伏せました。これは、最初にしたような、ふざけた心持ではなく、なんとなく痛々しいものがあるようで、兵馬も無下に振り払う気持にはなれませんでした。

「中房を逃げて出る時、いい月夜の晩でございました、旅に慣れたそのお若い方は、ずんずん進んで行っておしまいになる、草鞋なんていうものを、生れてはじめて、あの時につけたばっかりのわたしというものは、取残されてしまいましたね」

「その時の事情、やむを得ないからだ」

「それは、やむを得ないには得ない場合なんでしょうけれど、あの懸命な道中で、足の弱い女だけひとり残されたら、落ちるところは大抵きまったものです――わたしは薄情な若いお方より、悪人でも、助けてくれる人に縋った方がよいと思いました、そうしなければ、わたしは生きられなかったという次第なんでしてね」