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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
その前年にも新富座で古河新水が「三府五港写幻灯」という狂言をかいている。この時代には幻灯などというものが今日の活動写真のように持て囃されたのである。その一番目は「嫩軍記」で、団十郎の熊谷、菊五郎の敦盛と弥陀六、福助の相模という役割であった。
二番目の「浅間山噴火」は、菊五郎の出し物で、道中師の伊豆屋初蔵(菊五郎)が出入りの信濃屋の娘お夏(岩井松乃助)を信州小諸へ送ってゆく途中、浅間の噴火に出逢うという筋で、二幕目に噴火の現場をみせていたが、その大道具大仕掛けも開場前の評判ほどには目ざましいものでなかった。それよりも私のこころを惹いたのは、その三幕目の初蔵の家で、噴火の騒動のために大事のあずかり娘を見うしなった初蔵がしおしおと江戸のわが家へ帰って来るくだりであった。初蔵の家では父や女房が噴火の噂を聞いて、その安否を気づかっている。それは盂蘭盆の十三日の夕方で、どこやらで虫の声がさびしく聞こえる。女房(秀調)が門に出て迎い火を焚いていると、影のようにあらわれて来た初蔵の姿がその煙のなかにしょんぼりと立つ。その情景がひどくわたしのこころを動かしたのであった。