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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
眼だまの大きい坊主頭の赤松満祐――あれが日本一の団十郎であると教えられたが、わたしには格別に偉いとも感じられなかった。この場になると、どの人物もいよいよしゃべるばかりで、わたしにはいよいよ判らなくなった。この場の終り頃に、ぴかぴかしたを着た侍(宗十郎の浦上弾正)が団十郎の前で切腹することになるのであるが、それが一旦うしろを向いて、刀を腹へ突き立てて、それからまたくるくると這いまわって正面を向いて、そうして何か言い出したのを見て、切腹というものは妙なことをするものだと私はおかしく思った。なにしろこの一番目のうちでわたしを最も苦しめたのは右の二場で、今日でもあまり詰まらない芝居を見物していると、その当時の記憶がありありと頭に浮かんで来る。
最も詰まらなかったのが二場であると共に、最も面白かったのもやはり二場であった。それは赤松屋敷の門前と白旗城中との二場で、前の門前では大勢の立廻りがある。後の城中では大童の鎧武者(左団次の渥美五郎)の御注進がある。この鎧武者が敵の軍兵と闘いながら、満祐の前で御注進をする。今から思えば、それはこうした芝居の紋切り形であるが、その当時のわたしにはそれがいかにも壮快に感じられた。