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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
居士の方では出来ない相談のつもりで、こう言ったら恐らく驚いて逡巡するだろうと思ったところが、案外にも川上は平気な顔で――努めて平気を粧っていたのかも知れないが――はあ、よろしゅうございます、何分お願い申しますと答えたので、居士ももうどうすることも出来ないで、とうとうその脚本六幕を引受けることになったのであった。川上もその後には勿論それ以上の脚本料を支払った例はたくさんある。しかしその当時における二百円はよほどの奮発であったらしい。一事が万事で、すべての方面に対してこういう風に思い切りのいい、きびきびした遣り方が、かの川上をして成功せしめた唯一の原因であったらしく思われる。
川上一派の書生芝居がだんだん芽を噴いて来るに連れて、さらに若宮萬次郎の一派が起こった。山口定雄の一派が起こった。福井茂兵衛の一派があらわれた。かれらは一面に写実を標榜しながら、一面にはずいぶん不自然な支離滅裂な芝居を上演していたのであるが、ともかくも歌舞伎の舞台には見られない真剣の掴み合いや立廻りなどが呼びものになって、いつとはなしにその領分をひろげて行った。その当時の彼らは、努めて書生らしく粧うために、多くは紺飛白の衣類を着て、兵児帯をしめて、筒袖の羽織などを襲ねていた。