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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
その葬式は一週間の後、青山墓地に営まれたが、この日にも雨が降った。
さきに菊五郎をうしなったことも、東京劇界の大打撃には相違なかったが、つづいて団十郎をうしなったことは、更に大いなる打撃であった。暗夜にともしびを失ったようだというのは、実にこの時の心であろうかとも思われた。今後の歌舞伎劇はどうなる――それが痛切に感じられた。近年ますます勃興して来た新派劇は、現在でも歌舞伎の一敵国となっていて、日ましに隆盛の兆がある。その折柄にこの大打撃をうけたのであるから、歌舞伎凋落、新派劇全盛、こうした『蒙求』のような文句が諸人の口に伝えられた。それは局外者ばかりでなく、新派俳優のあるものは団十郎死去の報を聞くと、その夜新橋辺の料理屋にあつまって、やがて天下を我が物にすべき前祝いの宴会を開いたとか伝えられている。その中で、川上音二郎はおなじく茅ヶ崎に別荘をかまえている関係から、団十郎の別荘に毎日詰めきりで、市川家一門の人々も感激するほどに尽力した。それに一種の意味を含ませて、さすがに川上は利口者だと褒めるような嘲けるような批評を下した人が多かったが、天下取りの前祝いをする者さえあるなかで、葬儀を終始熱心に手伝いをした彼の行動を、いたずらに白い眼でのみ見るのは穏当でない。