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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

その年の十一月、彼は浅草の鳥越に新築された猿若座の開場式に出勤して、「北条九代名家功」を上演した。これは高時の天狗舞と義貞の太刀流しとを黙阿弥が脚色したもので、団十郎はむしろ義貞の方を得意としていたらしく、求古会員と相談して、その鎧兜などを念入りに吟味し、更に松岡緑芽に依頼して太刀流しの図を描かせ、奉書刷りの一枚絵にして知己に配ったりした。しかも舞台の上では高時の方が好評で、義貞の方はその後復活の機会をうしなった。

この高時の好評が彼をしていよいよ得意ならしめたばかりでなく、活歴嫌いの観客も少しく我を折って来たらしく、その活歴を謳歌する人々もだんだんに現われた。しかし一面にはやはり好感を持っていない人々もあると見えて、ここに一つの問題が起こった。わたしは子供の頃で、詳しくその事情を知らないが、当時の『歌舞伎新報』にポンチ絵のようなものが掲載された。それは高時の天狗舞の図で、一見しては別に仔細もないようであるが、高時が団十郎の似顔にかかれてあるのは勿論、それをひき廻している天狗どもが、すべて求古会員に擬らえてあるというのであった。天狗の数も会員と同数で、かの絵さがしと同じように、その天狗の顔や翼をたどって行くと、会員の苗字がことごとく平仮名で現われるということを誰かが発見した。