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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
その当時の鈍帳芝居なるものは、同じ小芝居とはいいながら、今日の小劇場とは全くその構造を異にしていた。鈍帳芝居には本花道を設けることを許されないので、今日の帝劇の花道を更に短くしたようなものを、下手から舞台へかけて斜めに作ってある。東の花道はまったくない。廻り舞台も許されないので、場面の変わるごとに幕にするか、あるいは引道具にするのである。幕を横に引かないで、上から吊り下ろすのである。こんな構造も今日から考えると別に不思議でもない、むしろ新式として歓迎されるかも知れないのであるが、その当時にあっては、花道のないこと、舞台の廻らないこと、幕の下りること、それらが甚だ不自由らしくもあり、見そぼらしくも感じられて、鈍帳芝居の卑しさと惨めさとが沁々思い知られるようであった。場内は無論に狭い。畳も座蒲団も実に穢い。座蒲団などは汚れてじめじめしている。その頃、大劇場ではすでに瓦斯の灯を用いていたが、鈍帳芝居にはそんな設備がないので、雨天の甚だ暗い日や日暮れ方の暗いときには、昔風の蝋燭を舞台へ差出して、かの“面明り”をみせていた。幕間には五銭の弁当や、三銭の鮨や、一銭五厘の駄菓子や塩せんべいなどを売りに来た。