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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
この狂言の五幕目は渡辺崋山切腹の場で、団十郎の崋山が切腹すると、さらに川澄なにがしという家老役の老人に変わって出るのである。この老人が屏風の内へはいって崋山の死骸をあらため、見事な最期であると褒めているところへ、女中が銅盥を持って来て、汚れた手を洗えというと、老人は頭をふって「手水などが要るものか。稽侍中の血、洗う勿れじゃ。」という。わたしも『十八史略』ぐらいは読んでいたので、稽侍中の血洗うなかれの故事ぐらいは心得ていたが、それにしても団十郎は大層むずかしいことを言うと思っていた。後に黙阿弥自作の脚本をよむと、この台詞は「手水などが要るものか。返すがえすも残念なことじゃ。」とばかりで、稽侍中の血などの文句は見えない。これは団十郎の自作か、あるいは誰かに教えられたのか。いずれにしても、団十郎が原作の脚本にあきたらず、種々の改訂を試みたのは事実であったらしい。
「夢物語」に対しては、諸新聞の評判もよかった。江戸の残党の劇通連も“新しい芝居”だといって賞讃した。これからの芝居はこうでなければいけないと言い触らす人もたくさん現われて来た。今にして思えば、こうならなくて仕合わせであったが、わたしも実はこうなるものかと思っていた。