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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁

青空文庫

「――大丈夫か?」

「おれなら大丈夫だ、剣術は素面素籠手の木剣とこなくちゃあ味がない」

「それでは望みどおり」

三年間に相手はかく落魄したが、こっちは一日もたゆまぬ修練で充分腕に自信がある、木剣を望むこそ幸い手足の一本も打折ってくれよう、――甲子雄は心中ほくそ笑んでしたくにかかった。

その時、道場へ門人に案内されて、お天気安が佐兵衛と一緒にはいってきた。

「仁木先生、頭をお伴れ申しましたぜ」

「おう御苦労――」兵馬は振り返って、

「頼んだ物は持ってきてくれたか」

「へえ、何だか知れませんが、十両持ってすぐこいというお話で」

佐兵衛が近寄ってきて、

「裸のまんま持ってきましたが」

「すまない、借りておくぞ、――これから甲子雄と面白い勝負をするから、隅のほうへさがって見物していけ」

「そいつぁあ豪気ですな、拝見しましょう」

「それから安、――きさま、奥へいってお嬢さまを呼んでこい、早くしろ」

「へえ合点です」安吉は奥へ飛んでいく。――兵馬は受け取った金を甲子雄に差し出して、

「先日の十両、返すぞ」

「どうしたのだ、返してもらうつもりで貸したのではない、きょうもこれから二十両……」