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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁

青空文庫

「いや取っておけ、木剣試合はちょいと間違うと命に関わる、借金を残して死ぬのはいやなもんだ、さあこれで貸借なしだぞ」

「そうか、――よし」

頷いて金を受け取る。二、三歩さがって、

「では、願おう」

「――心得た」と兵馬も退る、――ところへ安吉が、小浪を促して立ち現われた。

「先生、お嬢さまが見えました」

「御苦労、――お嬢さま、いま甲子雄と面白い勝負をしますから、そこでゆっくりと御覧ください、それから……安」

「へえ」

「その上段に甲子雄の脇差がある、それをちょっときさま見てくれ」

そう云いざま、兵馬は位取りをして、

「甲子雄、いいかっ」

「おう、――」

さっと両名は相青眼につけた。――居並ぶ門人たちも佐兵衛も、小浪はことさら胸を躍らせ、呼吸を詰めてじっと見まもる。

「安、――鍔を見ろ」兵馬がいった。

「あっ、こ、これは……」

「覚えがあるか」

「仁木さんこりゃあ、こりゃあ」

お天気安、眼を剥いて吃った、――兵馬はひたと木剣をつけたまま、

「龍の透彫、金象眼の眼、耳に疵のあるところ、きさまがあの晩、大先生のお手へ預けた物に相違あるまい」

「ま、まさに、まさにこれです」

「甲子雄、尻尾を掴んだぞ!」