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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
と、一人の郎党に命じて、長い竿を持たせ、そのさきに、錦の旗を解いて、月の空へ高々と振らせた。
声は船から船へ、一ときのまに、つたえられてはいた。夜目ながら錦の旗も月影に見たことだろう。やがて港じゅうが沸騰したようにわああッという武者声を捲きおこした。そしてすぐそれは勇ましい櫓ひびきや水谺と変じて、
「さらば後日」
「さらば、またの再会に」
と、呼びあいながら、かねての諜し合せどおり、船列の端から、続々、沖へさして別れ出て行った。
尊氏の船も、この夜、室ノ津を離れて西へ去った。
多くは、それぞれの自国へさして一たん帰帆して行ったが、あらかじめ覚悟のとおり、尊氏の船列には五、六百の兵しか扈従していなかった。
その中に、日野賢俊もついて行った。
彼はそのまま陣中僧として、尊氏のために犬馬の労をとり、後、室町幕府成立の日にいたッては、その枢機にまで参加した。
元々、日野家は貴族中の名門でもあり、これが機縁で後には足利家とも通婚した。そしてかの東山殿(足利義政)の妻として、利殖に長け、政治内争をみだし、ついに応仁ノ大乱の一因にもなったといわれる日野富子という室町型の一女性なども、この日野家から出たひとだった。