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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
東国や奥州地方は、そのごいよいよ穏やかでない。――正成の一族楠木正家も先に派遣されて、常陸にあり、東北朝廷軍の中心になっていた。――正成の処置に、みかどが御慎重なのは、ひとつには、それにもよるかと、公卿たちはあとで思いあたっていた。
顕家の奥州軍は、はや、都をひきはらって、みちのくへ帰る――と町ではさかんに沙汰されているのに、
「左中将どのは、まだか」
「まだ播磨への御発向にはいたらぬのか」
と一面では、しきりに、そのほうがいぶかられていた。
すでに三月である。
先発の先鋒軍は、とうに赤松円心や足利の与党がいる播磨地方へついているころだ。――にもかかわらず、尊氏討伐の総帥たる左中将義貞は、いまだに三条高倉ノ亭を立っていない。
今日もであった。
「……ぜひもないわ」
その高倉の館を見舞って、むなしげに二条の営へもどってきた弟の脇屋右衛門ノ佐義助は、すぐ自分をかこんで問う諸将へむかって言っていた。
「瘧病だそうだ……。数日らいの兄者の御病気は」
「お会いなされましたので」
「いやお目にはかからん。なにしろおひきこもりなので」
「瘧病とはまた」
「よりによってまた、わるい折に御発病となったものだ。