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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

が、すぐこれより立ちますので」

「いや」

正成は介をかえりみて。

「はや今日は黄昏れ。明朝、早く立たれてはどうかの?」

しかし、右馬介にとれば、その好意にも、どうという答えも持てない風だった。ここは敵中、とりことして扱われても仕方がない身なのである。何事にも唯々と従っているしかない。

正成は一同をつれて、そのまま水分ノ館へと歩いた。館の前の“駒つなぎ桜”はもうわずかな日のうちに散り褪せていて、その下には、領下の雑人たちの直訴でもあるのだろうか。さまざまな風態の人間が、地にぶっ坐っているふうだった。

が、彼らは、

「ア、おやかた様だ」

と誰かの一ト声をきくと、みな立って、門へ入って行く正成のすがたへあたまをさげていた。

小六と大蔵たちは、介をつれて邸内の長屋へ入り、正成は正面の式台をふんでいた。「……お帰りなされませ」と、久子の笑顔を中心にみな揃って出迎えている。正行も見え、卯木も見えた。また幼い者たちの、はしゃぎ廻る足音や、爺の姿や、ほか家臣たちの礼をも廊下に見て通りながら、この主のからだは、奥の一室へおちつくまで、賑やかな声にくるまれ通しだった。

「……あとで。