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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
赤坂城の復旧はまだ六、七分しかできていず、工事は半ばなのだった。しかし近郷の同族は、数日のまに、ぞくぞく、これへ集合していた。ここを起点に、兵庫表へ発向ときまったもので、さきに洞院ノ実夏が、正成へ、
勅のお召
と、つたえて来たみことのりへの応えだったのはいうまでもない。
ところで、当の正成は、なお赤坂城へも姿をみせてはいなかった。すべては水分ノ館のおくから弟の正季、祐筆の安間了現、久子の兄松尾季綱らにさしずしていた。そして、居ながら金剛、葛城の山波が望まれる彼の居室は、いつものようなひそけさで、今日は爺の左近をよんで、なに思ったか、
「蔵帳一切をこれへはこべ」
といいつけていた。
彼は、それらの検見帳から、領下の戸帳や蓄備倉の表や年貢控えなどを克明に見終っての後。
「爺、おととしかな、ひどい春の別れ霜と、そして夏はまたひでりで、この山里が、えらい不作にみまわれたのは」
「いえ、あれはもう、さきおととしのことでございましょう」
「そうか。するとここ両三年は、まず百姓も、少しは息をつけたわけよの」
「ま、何かと、よんどころない軍需の御用は徴せられておりますなれど」