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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

「弥四郎」

「はっ」

「正成は参内の後、主上においとまを申しあげ、おそくも午ごろには、都を離れよう。――助家の早打ちと行きちがうやもしれぬ。――で、そちは住吉へ駈け、もし熊野水軍の来援がわかったなら、すぐ西国街道の途中へそれを知らせてこい」

「かしこまりました」

弥四郎がただ一騎去るのを見送ッてから、正成は扈従の一隊と三百騎ほどをつれて、花山院の内裏へうかがった。

兵馬は宮門の外にのこして、正成ひとり、内へ通った。――ここは二条富ノ小路の旧皇居より一ばいまたお手狭である。正成が南庭の寝殿をそこに仰いだとき、はや後醍醐は彼をみそなわして、この日特に、御簾を高くあげさせておいでになった。

階のすぐ軒下を、

砌

という。

正成は、近うと召されて、その砌のあたりに、平伏した。

しげしげとそそがれている天皇のおひとみを、彼の背は恐懼のうちに感じている。――また御簾をはさんで居ながれている公卿たちの目も、みな息をためて、正成の容子に、洞察をはたらかせているふうだった。

「…………」

このような視線も、むりはない。正成がおもてを冒して、みかどへ直々に強烈な諫言を奏したのは、つい二月ごろのことである。