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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

――それを、尊氏来るの風騒に怯え、たちまち都を空にして、みかどの蒙塵を仰ぎなどしたら、それこそ、いよいよ武士どもを思い上がらせ、世の物笑いとなるのみだわ。……愚策、愚策」

と、清忠は肩をゆすッて笑い、そして列座の千種忠顕や四条隆資らと、ふた言み言ささやきあっていたふうであったが、やがて、その居ずまいを、こころもち玉座の方へ向けて、

「おそれながら」

と、笏を正して、奏上していた。

「王師ニ天命アリ、宜シク外ニ防ゲ――とは古来の鉄則かとぞんじまする。――事ただならずとは申せ、三軍はまだ健在ですし、金吾義貞も、前線にまかりおること。さだめしその新田とて、頽勢の恥をすすがんものと、心をくだいておりましょう。――さるを一廷尉の言をおとりあげになって、御動座などあらせられたら、王軍の将士は、それだけでも戦う気力を失い、ひいてはお味方の違和を大にし、敵を利するばかりのことかとぞんじられまする」

「…………」

いずれを採るか。後醍醐はお迷いらしい。

しばらくは、仰せ出でもなく、公卿たちの説に、お耳をかしておられた。

千種、四条、中院ノ定平ら、あらましは、清忠説を支持してやまなかった。