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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
そして衛府の門を出ると、なに思ったか、
「高倉へ」
と、軍兵をうながして、彼の馬はとうとうと先をきって二条高倉ノ辻へ馳せむかっていた。そこで馬を止め、
「やよ船田ノ入道、朝敵退治の都立ちには古例がある。知っているか。古式いたせ」
と、一つの門を指さして、命令した。
そこは今は人もなき、旧足利直義の空館なのである。――船田ノ入道は、その前に兵をそろえて、三たび鬨の声をあげさせ、また、三すじの鏑矢を邸内へ射込んだのち、中門の柱を切っておとした。
するとここの鬨の声にあわせて、三条河原の空でも、わああっと、武者の諸声がわきあがっていた。
上将軍の陣であった。
大将軍義貞のほかに、後醍醐の一ノ宮、中務尊良親王が、上将に任ぜられ、この日ともに都を立つこととはなっていた。
まもなく、義貞の軍は、尊良親王の騎馬一群をまん中に迎え入れて、その長蛇のながれは、順次、三条口からえんえんと東していた。
このさい、親王の中書軍がささげていた日月の錦の旗が、とつぜん突風に狂い、竿頭から地に落ちたので、人々みな、
「あな忌まわし」
と、不吉感に吹かれたなどと古典太平記にはあるが、作為であろう。