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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

「いよいよ、敵がよせてきました。山手、街道、浜づたいの三道から――。オオ海上にも」

「む、来たな」

しかし正成は、なお、ゆとりあるものとして、南々西一帯の海から山へ眼をすましていた。刻々、風は凄気を孕み出す。午前十時をやや過ぎる。やがて和田の上陸戦、浜の手勢、山手隊の喊声まで、一時にこれへ聞えていた。

「弥四郎っ。――左翼の先鋒へつたえろ」

初めての命令だ。

正成は、床几を離れて。

「須磨口から驀しぐらに、街道をすすんでくる一軍こそ、足利直義の主力。だが、あわてるなと申せ」

「はっ」

「彼方に見ゆる蓮池のあたりを、直義の手勢がこえて、あらまし近々と寄るまでは、味方はただ駒を踏まえて待て。――正成が次にくだす指揮をかたく待てと、触れろ」

あっと、弥四郎が駈け下りてゆくとすぐ、

「四郎兵衛っ、四郎兵衛」

うしろの群れから、岡田四郎兵衛友治をよび出し、正成はつづいて、右翼への二ノ令を発していた。

「峠から峠を越えて、彼方の大日堂まで迂回してきた敵の山手隊は、おそらく、かしこの部落で、一ト息いれているだろう。――正季に急げと申せ! 逆に、われから驀進して、休息中の敵を突け! と」