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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
尊氏の命で、僧所では同日、正成以下楠木一族の供養がいとなまれていた。もちろん施主の尊氏もこれに臨んでいたことはいうまでもあるまい。のみならず、彼は供養が終ったあとで、
「介……。そちならではだ。まいちど、河内へ行ってくれい」
と、寺の一室で、右馬介へこう託していた。
「つらい使いではあろうが、正成の首級を遺族の者へとどけてやって欲しい。ことばは何もいらぬ。ただ尊氏の意が通じればそれでよい。あとの所領やら今後の迷いに、遺族たちもひそかな安堵はするであろう」
「かしこまりました」
介は、どうしてなのか、涙がこぼれた。
わけもなく、彼には、さむらいという者の住む世界が、儚く、哀しくなってきた。それを、無常というだけには複雑すぎる。
「どうした? 介」
「はい。いや、おわらい下さいまし、ただ余りに、おなさけがありがたくて、つい」
介は、横を向いて、顔をこすッた。
この主君に、彼は十代の幼いときからつかえてきた。敵側の者は大逆無道の人といったりするが、そもそも、地蔵尊の申し子みたいなお方なのだ。けれど、この君へも、いつまで時が幸いしてゆくだろうか。弓矢の人には、朝がそのままの夕でない。