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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

僭上などと日ごろの行儀は、知るところでございません。いずれにせよ、累年、忠義のみちを取って、臥薪嘗胆、かくまで奮戦してきた者どもを捨てて、なおどうあっても、敵へ御降伏に出られるものなら、もはやぜひもないことです。まず義貞義助以下、新田一族の者をこれに並べ、その首を刎ねてから、出御のおふれ出しをねがいましょう。……いざまず、貞満の首からさきにお斬りくだされい」

むりもない。いちいち、理にあたっている。その罵言にも、返すことばはないのであった。のみならず、ほんとに、彼ら武家が怒ったら、どんな事態になることやら、はかり知れない。

公卿はみな、青白く黙り沈んでいるのみだし、後醍醐もまた、きざはしの半ばに釘ヅケにされた態で、この一個の荒武者を、どうするすべもなくお立ち恟みのままだった。

折もよく。むしろ、帝にとっても、今は、救いともいえるようなこの時に、

「おっ、左中将が」

「義貞が、子の義顕と」

「弟の右衛門ノ佐義助も打ち連れて、三名これへ見えまする」

と、口々の声にながれた。

後醍醐は、さらに階を数段、上へもどった。そして茵を待ち、茵にすわって、すぐ階下へ来てぬかずいた新田の父子兄弟三名をあらためて見た。