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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
そしてわたくしは」
「あ。思い出したわ」
「ご存知でしたか」
「二位殿(高時の妾)の御所に仕えていた者であろ。……かねて和氏から聞いていた」
いつであったか。細川和氏の夜話に聞いたことがある。
高時滅亡の直後。
そして鎌倉の焦土に“犬神憑き”という奇病が流行っていた頃のこととか。和氏と弟の師氏は、浜の漁師小屋で、一夜、ふしぎな小娘を見かけたという。
戦後のちまたには、亡家の女たちが、みな身を売ったり浅ましい生業のもとに生き喘いでいたが、その小娘は、亡主の二位殿と高時との仲に生した亀寿丸の行方を独りさがしあるいていた。――と聞いて、和氏はそのけなげさに感じ、舟を与えて落してやった。――という巷話を尊氏はいまふと思いだしたのだった。
「そのときの棗とやらだな。棗か、そちは」
「和氏さまのあのときのお情けは、いまも忘れてはおりませぬ」
「ではその折から、兄や父のいる諏訪へ帰って、亡君のわすれがたみ、亀寿さまのおそばに、再び仕えていたわけだの」
「はい。兄の三郎盛高は、あの日、亀寿さまを背に負うて、信濃へ落ちておりました」
「むむ。さすが北条遺臣の中には良い武士はあったのだな。