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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁
「親分の前だが、あれは狐ですぜ。案内されて柳橋の鶴源へ行くと、あの手紙を書いた客はもう帰ったと言うじゃありませんか。その辺で御免を蒙りゃいいのを、あの女が『家まで案内しましょう、谷中の三崎町ですから』と言うのに釣られて、薄暗くなってから、谷中へ足を向けたのが間違いのもとで――」
「してみると、あの女は鶴源の者じゃなかったのか。道理で――」
と平次。
「あの女は少し綺麗すぎましたよ、それに持ちかけようが一通りじゃねえ。あんなのは羅生門河岸にも大根畑にもいませんよ」
「馬鹿だな、その気だから狐にも雌猫にも化かされるんだ――それからどうした」
「第一、あの話し振りの面白さというものは、親分の前だが、――柳橋から谷中まで、なんの事はねえ、掛け合い噺だ。色っぽくて、気がきいて、洒落ていて」
「いい加減にして筋を運べ、馬鹿馬鹿しい」
「谷中へ行くと、もう真っ暗だ。それからお寺と墓所を縫うように、半刻(一時間)ばかり歩き廻って、気がついたのは天王寺前――」
「陰に籠った声なんか出したって、凄くも何ともないよ、――第一、この寒いのに、当もなく谷中を半刻も歩く奴があるものか」
「どこをどう歩いたか、それが判らねえから不思議だ」