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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

上の二重丸は少し小さく、直径八分ぐらいに、丸と二の字は二寸ばかり離して、二の字の足はそれぞれ五厘ほど長く描き、最後の二重丸はグッと大きく、径三分五厘ほどに描き上げたのです。

「八、これを持って帰れ、袷の袂へ入れて行くんだ。そのお吉という女がまだ居るんなら、きっと探し出して贋物と知らずに持って帰るに違いない。そこを跟けて、巣を突き止めるんだ。これは余程大仕事かも知れないぜ、気を付けてやるがいい」

八五郎は平次に言われた通りに運びました。帰って来たのは夕景、お吉という女は、すっかり女房気取りで、叔母を手伝って晩飯の支度などをしております。

「おや、八さん、お帰んなさい。大層な御機嫌ね」

「何を言やがる」

八五郎はツイ痛烈に浴びせかけましたが、思い返して、着ていた袷を脱ぎ捨てると、少し薄寒そうな浴衣を引かけて、手拭を片手にプイと飛出しました。

「あら、銭湯へ行くのかい、一本つけて待ってますよ」

追っかけるようにお吉の声。ガラッ八は舌鼓を一つ、大急ぎで、路地を出ると、天水桶の蔭へ蝙蝠のようにピタリと身を隠しました。

お吉は八五郎の脱ぎ捨てた袷の袂から、贋物の結び文を捜し出して、続いてその後から飛出した事は言うまでもありません。