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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

伝次郎に捨てられて、ブラブラ患いをしているから下手人と判っても、訴人するものはありませんよ。それにあのきりょうだ」

「馬鹿。誰がお染を下手人だって言ったんだ」

「三崎町中の評判ですよ」

「呆れた話だ。ブラブラ病の娘が出刃庖丁を持出して、自分の倍もあろうという、肥り肉の女を、たった一とえぐりに殺せるものかどうか、考えたら解りそうなものじゃないか」

平次の言うのは尤もでした。が、

「でなきゃア、お民を殺したのは、出羽屋の伝次郎ですよ」

「何?」

ガラッ八の言葉も予想外です。

「町内の人や、奉公人の口振りじゃ、伝次郎はお民をひどく嫌っていたようで」

「フーム」

「お民が乗込んで来たんで、好いた仲のお染と別れたんですぜ」

「だから、伝次郎がお民を殺したと言うのか」

「男なら、弱そうに見えても、あのくらいの事は出来ますよ」

「斬られたのは右の喉笛だ。――が左の頸筋には、黒血が溜っていた。倒れた時打ったにしちゃおかしい。恐ろしい力で左の頸筋を叩くように押え込み、右から出刃を廻して斬った傷だ。――伝次郎ではむずかしいな」

平次は何やら考えております。

「伝次郎でなきゃア、親父の伝右衛門――」