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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

「長六どん、ちょいと聞きたいが――」

平次の目顔の合図を読むと、小僧の長六はチョコチョコと物蔭へ顔を持って来ます。

「親分、御用は」

「皆んな変りはないか」

「ヘエ――大変りですよ。御新造さんは取乱して泣いてばかりいるし、番頭さんはウロウロして、箸で歯を磨いたり、楊枝で御飯を食べたり」

「儀八さんは?」

「若旦那は何にも言いません。一番平気な顔をしていますよ」

平気な表情の底に、どんな不安と暗さが流れているか、平次にもこれは判りません。

「ところで、最初の使いと二度目の使いの間、家のあたりで誰か見かけなかったかい。外から店を見張っているものがあったはずだが、気がつかなかったかい」

「そういえば、変な奴がいましたよ、親分」

「どんな人間が」

「暗くてよく判りませんでしたが、乞食ですよ」

「見たことのある乞食か」

「いえ、あんな奴は始めてで、――四十ぐらいで、無精髯を生やして、天水桶の蔭へ丸くなって、半刻ばかり動かなかったんです、――が、何か見た事のある人間のような気もしますよ」

長六の記憶は次第に蘇ります。

「無精髯を取った顔を考えてみるがいい」

「あッ、あの使い屋ですよ。