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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

真っ直ぐに門前の花屋へ飛込んで聞くと、

「夜の白々明けに、踊りの師匠のお喜多さんが墓場へお詣りに行きましたよ」

「えッ」

「あんなに早いお墓詣りは、年に一度もありゃしません」

そんな事を言っております。

お喜多というのは、この町内に長く住んでいる手踊りの師匠で、年は若いが、その頃江戸中に響いた女の一人です。

なるほどお喜多なら、石塔の上も自在に飛ぶでしょうし、柳の枝から塀外へ、トンボ返りをして逃げるような芸当も朝飯前でしょう。

平次とガラッ八は、何とはなしに顔を見合せました。

「親分、しょっ引いて来ましょうか」

それを聞くと八五郎、すっかり勢い込んで、猟犬のように駆け出しそうな気組になります。

「いや、お喜多は踊りの名人だ。玄翁で人を殴り殺すような不粋な事をするはずはない」

平次は考え込みました。

「名人だって人を殺さないとは限りませんぜ。それに、下手人は裏口から入ったに決っているから、幽霊に化けたお喜多の外にあるわけはありません」

ガラッ八も負けてはいません。

「お喜多でなくたって、裏口から入れるだろう。幽霊退治の同勢は一刻も植幸の離屋で飲んでいたんだろう」