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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

思いのほか達弁にこう語り進みます。二十二三の出戻りだという醜い女。給金をがっちり溜め込むより外には望みがありそうもない人柄です。

「人間の足跡はなかったんだね」

と平次。

「表にも、裏にも、人間の足跡なんかありゃしません」

「雪は宵から降ったはずだ」

それみろと言った調子は三輪の万七です。

「番頭さんが泊ることにしたのは亥刻(十時)少し過ぎて、それから夜中まで降りましたが、私が丑刻(二時)前に小用に起きた時は、便所の窓から見ても、もう小止みになっていましたよ」

お金は確り者らしく、思いのほか語意が届きます。

「犬がどうかしたというのは、一体何の話なんだ」

平次は最初の疑問に返りました。ガラッ八の報告にも、万七のイヤがらせにも、犬の話が付き纏っております。

「裏口には、犬の足跡がありましたよ。向うの往来から入って来て、何か食物を漁って帰ったんでしょう」

「その犬が人を殺したというのか」

平次もツイそんな事を言う気になったのです。

「でも、犬の足跡に少し血のようなものが滲んでいましたよ」

「フム」

平次は一ぺんに茶かし気分を封じられてしまいました。犬の足跡に血が付いているとなると、これは考え方を立て直さなければなりません。