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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

平次はそのまま駆け続けました。

「あッ、親分」

「なんだ、八か」

「曲者の姿が、この辺で見えなくなりましたぜ」

「お前もそう思うか」

「路地へ消えたか大地に潜ったか、とにかく引返さないことだけは確かで」

関所に頑張らずに曲者の後を追ったのは八五郎の出過ぎですが、その代り、曲者の消えた場所を二人の眼で、左右から正確に見定めることの出来たのは怪我の功名でもありました。

「左側だ。――その辺に人間の潜るような穴はないか」

「穴はねえが、木戸が一つありますよ」

「押してみろ」

「開きませんよ」

「どれ」

近づいた平次、粗末な三尺の木戸を押してみましたが、中から桟がおりているとみえて、力ずくでは開きそうもありません。

「乗越してみましょう」

ガラッ八は木戸へ這い上がると、思いの外身軽に越して、向う側からガチャガチャやっております。

「どうした、手間がとれるじゃないか」

「輪鍵が外れませんよ」

「逃げ道に輪鍵は念入りだね」

ようやく押し開けて入った時は、目の及ぶ限り、曲者どころか野良犬の影も見えません。

「違やしませんか、親分」

「確かにここに追い込んだのは、『千里の虎』だ。間違いはねえ。