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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

「言いにくいなア、親方」

「ヘエ」

「綾吉殺しの下手人が判ったんだよ」

「えッ」

「力松やお喜多じゃない。――もっと思いも寄らぬ人だ」

「誰でしょう、親分」

「あの晩、この離屋に居た人間だ」

「すると」

恐ろしい焦躁と不安に、植幸の唇は雁皮紙のように顫えます。

「幽霊退治の同勢が墓場へ飛込んだ後で、そっと石屋の庭から、綾吉の長屋へ行けるのは、親方のところのお神さんと、伊勢屋のお嬢さんだけだ」

「えッ」

「お神さんは離屋を片付けていた」

「…………」

「お嬢さんは綾吉と夫婦約束をしたことがあるんだってネ」

平次は急にとんでもない話をします。

「そんな事が、親分」

「綾吉はそれを反古にして、お喜多に夢中になったんだろう。お嬢さんが腹の立つのも無理はないが、玄翁で殴り殺すのは少し荒っぽいな」

「親分」

植幸は植木の蔭に踞ると、平次の袂に縋り付いて、ワナワナと顫えておりました。

「気の毒だが、お嬢さんに縄を打たなければなるまい」

「親分、お目こぼしを願います」

「綾吉は悪い男だ、――捨てられた口惜しさに、取りのぼせて殺しただけなら犬とも思うが、何にも知らぬ力松に罪を被せようとしたり、幽霊退治などを始めて、お喜多にまで、疑いをかけさせたやり口は憎いな」