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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁
平次はそう言って、迷子でも探すように、提灯を振り照して、淋しい聖堂前へ足を延ばしました。明神様を中心に、煮えこぼれるような賑わいですが、この辺はさすがに人通りもなく、お茶の水の夜の静けさが、遠音の祭を背景に、妙に身に沁みます。
「これは何だ」
平次は、道傍の崖から、何やら白いものを拾い上げました。
「お、そいつは揃いの手拭だ」
提灯にすかして見るまでもありません。町内で揃いに染めさした、波に千鳥と桜をあしらった手拭、少しお花見手拭染みますが、派手な図柄を選った、若い人達の好みだったのです。
「これがあるようじゃ、この辺が一番臭い。提灯を上から見せて下さい」
二つ三つの提灯を、崖から差出すと、その頃はまだ、藪も段々もあったお茶の水の崖の下に、夜目にも白々と手古舞姿の女の死体が横たわっているのでした。
「あッ、お春さんだ」
騒ぎはそれから、火の付いた鼠花火のように飛び交いました。綱をおろして、引上げて見ると、紛れもないお春、手古舞姿のまま、背後に背負った花笠の赤い緒で、見るも無慚に絞め殺されていたのでした。
縮緬の長襦袢が、藪と杭に裂かれて、上半身の美しい肌が半分はみ出した上、男髷が泥に塗れて、怨みの眼を剥いた相好は、女が美しいだけに、凄まじさも一入です。