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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁
石屋の力松は隅っこの方からこんな事を言っておりました。
「綾の野郎、急に商売気を出したもんだね、女でも引摺り込む心算じゃないのか」
誰かが、交ぜっ返す調子で、卑しい笑いを笑っております。
「力兄哥、ちょいと覗いてみてくれ」
と植幸。
「また行ってくるのかい」
「若いのがたった一人欠けちゃ面白くねえ、用事もあるだろうが、町内交際の積りで、ほんの一刻顔を貸してくれ――って言やいいんだ、一杯やりながらお定まりの時刻を待つんだ」
「…………」
「頼むぜ力兄哥」
「行かないとは言わないが、あの野郎の面を見ると、酒が不味くなるぜ」
石屋の力松はノソリと立ちました。肩幅の広い、背の低い少し怪奇な感じはするが、二十五六の見事な恰幅です。
「おっと、墓場を抜けて行っちゃ、打ちこわしだ。力兄哥のような強そうなのを見掛けたら、一件の方で怖じ気を振って出るのを見合せるぜ。少し遠くて気の毒だが、寺の前から、番太の横へ入って貰おうか」
植幸の親爺は恐ろしく気が付きます。頭が禿げているくせに、若い者と一緒になって、騒ぎたくてたまらない性分だったのです。
「…………」
大きい舌打を一つ、力松はそのまま、生暖かい外の闇へ出ました。