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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

「水ばかり呑んでいる積りなら気が強い――とね」

「交ぜっ返しちゃいけねえ。親分、ところで次の一つは」

「女房の来てのねえことじゃあるまいね。この節は女の子の相場も高くなったよ」

「そんな間抜けなものは要らねえ――憚りながら、女房と心張棒には当分用事のねえ世帯だ」

「合の手が多過ぎるよ。その――世の中が悪くなったという、もう一つの証拠は何だ」

銭形平次も少し真剣でした。

「ろくな御用がねえ事ですよ。ね親分、十手の錆なんざ、小唄にもならねえ」

「馬鹿野郎。世の中が良くなればこそ、こちとらに仕事がなくなる道理じゃないか。罰の当った言い草だ」

「だがね、親分。世間に悪人が根絶やしになる道理はねえから、銘々、人の目に付かないところで、そっと悪事を働いてるんじゃありませんか」

「たいそう考え深くなったじゃないか。――だが、そんな事を言った日にゃ、この世の中が恐ろしくて、一日も暢気な顔をしちゃいられなくなるよ」

平次は事もなげに言いましたが、八五郎の言うことが、長い間の経験で、間違っているとは言い切れません。平次は名御用聞と言われているだけに、この世の中には、どんなに悪事を企んでいる奴が多いことか、その中のほんの一部が実行され、そして、またその一部分だけが露顕することをよく知っていたのです。