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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
きっと癒して見せる
ハテこのような寒空に何者が鼾を掻いているのかと二人は心に驚いて絵馬堂の前まで行って見た。
何んという呆れた態であろう。絵馬堂の板の間に大の男が下帯一筋の赤裸で雪の積もった今日の日を寒いとも思わぬか高鼾でグーグー眠っているではないか。
常陸と山尾は顔見合わせてしばらくそこに彳んでいたが、
「いかに丈夫な体でもこの寒空に赤裸で絵馬堂に睡っては耐まるまい、起こしてやろうではござらぬか」
常陸の言葉に山尾も頷き、声を合わせて呼ばわった。
「こりゃこりゃ若者、眼を覚ませ!」
すると若者は鼾を止めてフッとその眼を見開いた。それから悠々と起き上がった。
「これはこれはお侍様に、目の覚めるようなお嬢様、私をおよびなされたそうな。何かご用でございますかい?」
「別に用とてはなかったがこの寒空に裸体の昼寝、風邪でも引くと気の毒と思ってただ呼び醒ましたばかりであるぞ」
きっと癒して見せる
「へえ、さようでございましたか。ご親切は有難うございますが、そのご親切がかえって怨み、私はこのまま寝ていた方がいっそ勝手でございます」
裸体の男はこう云ってまたもやゴロリと寝ようとした。
「これこれ若者、馬鹿なことを申せ、いずれお前は旅の人間でこの土地の様子を知らぬからこそさような太平楽も申しておれ、恐ろしいこの土地の話を聞いたら恐らく身顫いするであろ