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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
薄に隠れた常陸
。しばらくのお別れでございます。なにとぞなにとぞお師匠様にはまた逢う時までお壮健に、お体をおいとい遊ばすよう常陸お願い申し上げまする」
「常陸殿、いよいよお立ちかな」
三太夫も容を改めて、
「それでは壮健で参られよ。今に到って更めて申し上げるほどのこともない。ただ身体を気をつけられい」
三太夫は才蔵へ眼をやって、
「才蔵、菊酒を持って参れ」
「は」と才蔵は立ち上がりそのまま奥へ引っ込んだが、間もなく素焼きの瓶を持って静かに再び現われた。
薄に隠れた常陸
「ただ別離の心尽くし、寿を延べる菊の酒、常陸殿一盞傾けられよ」
自分で一盞傾けてからそのまま杯を常陸に差し、三太夫はこう云った。
「有難く頂戴仕ります」
常陸は注がれた大杯を静かに味わって飲み干した。
「何の風情もござらぬの。老人がお肴申そうかの」三太夫はやさしく微笑して、「唐歌の一節吟ずるとしよう。そなたに対する餞じゃ」
やがて朗々と吟ずるを聞けば、
植物ハ微ナリト雖モ性常アリ
人心ノ翻覆至ッテ量リ難シ
李陵衛律陰山ニ死ス
葵花ノ太陽ヲ識ルニ似ザルナリ
「どうじゃな、お気に召されたかな?」老人は莞爾と笑ったが、「これは東坡の詩でござる。