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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
無理難題
すると突然、その囃子が、断ち切ったようにプッツリ消えて、鋭い女の悲鳴がした。
「また一人女を手討ちにしたな」
山賊の一人は嘲笑った。
再び女の悲鳴がして、こっちへ駈け来る足音が、廊下の方から聞こえて来た。
三人の山賊は周章だしく張りボテを頭に冠ったが、そのままあたかも消えるように、室から外へ出て行った。
忽ち女の足音が、襖の外まで聞こえて来たが、颯と開いたその向こうから、美しい若い処女らしい、一人の女が髪を乱し、幽霊のように現われた。
その美しい腰元が、転ぶように室の中へ飛込んで来ると、絹を裂くような悲壮な声で、「右門様!」と呼ぶのであった。
と、それを合図にしたかのように、反対の側の白襖がパッタリ前へ仆れると共に、前髪を昨日削ったらしい青黛あざやかな若侍が、電光のように走り込んだ。
二人の男女は抱き合った。
一人は花村甚五衛門の息。一人は洞院左膳の娘。親と親とは犬と猿ながら二人の男女は恋人同志、命まで賭けた仲であった。
無理難題
「そなたの泣き声が裏庭を通し、表まで響いて来たによって、思わずここまで走って来た! いったい何事が起こったのじゃ!」
右門はせかせかと訊くのであった。