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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
真っ赤な贋物
云い捨て一人ノシノシと客殿の方へ歩いて行く。
客殿の襖を恭しく開けると、膝を突いて一礼し、ついでに使者の様子を見た。男女の使者は部屋の上座に寂然と静まり控えている。物に動ぜぬ大丈夫の態度、正しく木曽家の使者と見える。地丸左陣は静かに進み、定めの席へ端座すると、グイと臆めず相手を見たが、五分の隙もない構えである。
「お尋ねにあずかりました地丸左陣、すなわち私奴にござります」
「我らは木曽家より使者の者、姓名の儀は落合内記、お見知り置かれくださるよう」
相手の武士も丁寧である。
真っ赤な贋物
「して、お尋ねのご用の筋は?」地丸左陣は慇懃に訊く。
「おお其の儀は」と落合内記は一膝グイと進ませたが、「何んと地丸左陣殿、我らが主君義明公と、同盟なさる気はござらぬかな」
「それがお使者のご主旨かな?」
「いかにもこれが主旨でござる」
「木曽は武家の名門でござるに、我ら如き緑林の徒に、何んと思うてそのようなこと……」
「不思議に思われるのはごもっとも、しかし現在の木曽家なるものは、まことに微弱なものでござる」
「内訌あるとは承わっておれど……」
「さようさよう、その内訌じゃ。家臣花村甚五衛門は、主君を見限り領地へ引退、洞院左膳は謀反をする。