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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
笑って出立なさるがよい。愚老もお供致すであろう。介添え役とはほんの名ばかり。足手纏いかも知れませぬが、行ける所まで行くとしよう。世の中は広い。天は高い。地に潜っても生きては行ける……愚老、先頭を切りましょうかな! さあいらせられい、いらせられい」
彼は戸口へ歩いて行く。
弾正太夫は微動さえせずムズと椅子へ腰掛けている。どこへ取り付く術もない。今ぞ親娘が一生の別れ。
「お父様!」
と呼びかけた。無言! 答えを返そうともしない。
「今こそ、おさらばでござります!」
血を吐くようなその声にも、弾正太夫は眼もくれない。石で作られた像かのように巍然として腰かけている。
芳江は市之丞に縋ったまま、よろよろと戸口へ走って行った。
既に戸外へ出て行ったオースチン師の叫び声が、二人の耳へ聞こえて来る。
「おお大変な暴風じゃ! 一寸先も見えぬほどの、前代未聞の大雪じゃ! 若者の門出にはちょうどよい! 雪と嵐! さあ来るがよい! 進むがよい!」
こうしてとうとう若い二人も、部屋から戸外へ走り出た。
オースチン師の叫び声が、尚も部屋の中へ響いて来る。
「とうとう来たな! おおよう来た! 涙は人生に禁物じゃ! 笑って進め笑うに限る! 嵐よ雪よ、荒ぶがいい! それを突っ切るのが目的じゃ! ――おお気を付けるがいい。