Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
「エイ」「ピシーリ」と林の中では、一人の武士が木太刀を揮い、立ち木の股を裂いている。白面隆鼻、前髪立ち、多少姿は変わってはいるが、それは東条数馬であった。
数馬は右衛門に導びかれ葡萄大谷へはいってからは、右衛門の家に同居して、彼が自得の小太刀の妙技「八双払神妙剣」の、その伝習を受けるかたわら、夜な夜な深林へ出かけて行き、両手の冴えを磨いていたが、昨夜も大雪を物ともせず、魔境と称して人の嫌う硫黄ヶ滝の森へ来て、木太刀を揮っていたのであった。
「オオもう夜が明けそうな。右衛門殿も待っておられよう。そろそろ帰ると致そうかの」
こんな事を呟きながら、木太刀を右手にひっさげたままスタスタ森を抜けようとした。
その時、絶壁の遥か上、高原に当たって騎馬武者の音、馬の嘶き、物具の響、それらに雑って若い女の悲鳴が幽かに聞こえて来た。
「不思議な事の」
と、一瞬間、彼は小耳を傾げたが、次の瞬間には掛け声と共に、雪の絶壁を飛び上がった。上州花隈の城主として、天狗飛切りの秘術を編み出し、当時芳名香しいところの、戸沢山城守より伝授されたる小太刀潜入飛燕の術もて、岩に手を掛け枯木に縋りまたは空中を両手で煽ぎ、数十丈の壁面を、目にも止まらず躍り上がる。