Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
残った花桐
葉村の長の下座敷から、今日も優しい今様が、さも悠暢と聞こえて来た。
「やんや、やんや」
と、舞い終えると、座に並んだ者達は囃し立てた。
それは紋十郎の一座であった。葡萄大谷の弓掛部落、その部落の百人長、紋十郎が一味を引き卒れてだだら遊びをしているのであった。
しかし部落の住民などの玩弄物になってしまっては、遊君の値打ちも台なしであるとは云え、この頃の遊君と来ては、徳川時代の山猫芸者、それくらいの価値しかなかったもので、冬木だの錦木だの若紫だのと、名前ばかりは立派であったが、その実諸国からの寄せ集めもので、それもおおかたは人買いの手から転売されて来たものである。まして和佐保の遊君は、葡萄大谷の部落民と船津城下の武士達によって、唯一の財源を得ていたのであったから、彼ら部落民に買われることは、むしろ有難いと云わなければならない。
「やんや、やんや」
とまたひとしきり囃し立てる声が湧き起こった。若くて美しくて精神の優しい、花桐という遊君が、静かに立ち上がって舞い出したからである。
「舞いも囃子も止めた止めた! えい、聞きともない見たくもないわい!」
と、せっかくの興を破壊して、突然叫んだものがある。