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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
「してどこにあると云うた?」
「おおそれも聞きました。人に見付かり奪い取られては、虻蜂取らずに成ると云うて、思いも及ばぬ巧みな場所に隠してあるのでございます」――「うむ。そうしてその場所は?」
「硫黄ヶ滝の大絶壁に一筋深く穿っている、雉子ヶ洞という洞穴の奥の、畳み上げた大石の下に」
「そこに確かにあると云ったか?」――「ハイ、確かにあると云って、鼻うごめかしておりました」
「おお忝い、よくそれまで、深くも探ってくれたよの! お礼は海山後で云う! 今はちょっとの時刻も大事。葡萄大谷まではここから二里、硫黄ヶ滝までは尚遠い! しかも険しい山道ながら、韋駄天走りに駈けつけて、今宵の中に手に入れねば、どのような邪魔がはいろうも知れぬ! 島君さらばじゃ!」
と云う声もろとも、裾を捲って駈け出した。
「おお、もうそれでは行かんすか」
こう島君が云った時には、右衛門の姿は闇に隠れ、跫音ばかりが聞こえていたが、その跫音もやがて消えた。
「どうぞお怪我をせぬように」
こう口に出して念ずるばかり、茫然佇んだ彼女の肩をハタと叩いたものがある。振り返って見れば思いもよらぬ紋十郎が立っている。