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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
暴風雨の中の呻き声
「おおそうじゃ憎いは右衛門めじゃ!」初めて紋十郎は声を上げた。「この無残しいお前の自害も元はといえば右衛門めが由ない事を云ったからじゃ!」
「いいえいいえ違います! 心残りと云うたのは名残り惜しいというたのでござんす。あああのお方にももう逢えぬ。妾が死んだと聞いたなら兄と一つではなかったかと、初めて思うてくださりましょう……息が苦しくなりました。もうおさらばでござります……南無阿弥陀仏……」
と声も幽かに、お吉は前へ仆れたが、息ははかなく絶えたのであった。
紋十郎は眼をつぶり、ひしと両手を合わせたまま、歯を食いしばって泣いていたが、やがてスックと立ち上がった。
「謀反はやめると一言云ったら嬉しく成仏したであろうが、妹の情にほだされて、せっかくかたった仲間や同志をむざむざ裏切ることもならず、乗りかかった船突っ切ったものの可哀そうなことをしてしもうた。……とは云えこうなった上からは繋累のない己一人! 気安く何んでもしてのけられる……要害堅固の葡萄大谷、出口入口人数の配置、弾正太夫の居城の様子、天蓋山の吟味所まで、おおかた今は探り尽くした。今夜にも合図の烽火を上げて神保様の軍兵を引き入れることも方寸にある! いやその前に島君を捉え、硫黄ヶ滝へ引いて行き、右衛門めと押し並べて火薬の犠牲にしてくりょう」