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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
西南指して天翔ける
退治遊ばすが肝要でござります」
「退治ると云うても向こうは亡魂。死人を退治る法はござらぬ」
「いやいや死んではおりますまい」御嶽冠者は静かに云った。
「はて、死んでいないと云うは?」
師は驚いて訊き返す。
「さよう、死んではおりませぬ。あの武者所鬼王丸は生きている筈でござります」
「これはこれは解せぬ事じゃ。現在愚僧が太刀を揮って首打ち落としてござりますわい。人間の身で首を落とされては死ぬより他はござりますまい」
「彼は人間ではござりませぬ」
冠者の言葉はいよいよ出でて益※(二の字点、1-2-22)奇怪を極めるのであった。
オースチン老師もこれには驚いたか、眼を見張って物を云わない。
「彼は人間ではござりませぬ。加賀の白山に数千年生い立つ楠の木の精にござります」
「何か証拠でもござるかな?」
「加賀の白山十二峰の一つ瑠璃ヶ岳の谷深く一本立てる大楠の木こそ彼の本身でござります」
こう云って冠者は打ち案じ、遠い昔の出来事を思い出すような表情をしたが、
「おおよそ今より十年前。私諸国を漫遊し名ある勇士を尋ねおりました際、加賀の白山に英雄ありと聞き分け入りまして調べましたところ、山路に迷い谷に下りふと行手を眺めますと、数千年を経たる楠の木あり、それを廻わって異形の者ども踊っておりましたれば、息を殺して眺めおりますると、楠の木の幹自