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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Read 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 335,908 characters · 669 screens
誠に整然として厳重である。
別館は四方吹き払いの小丘の頂きに立っていたが、今その別館の一室でヒソヒソ話し合っている男女がある。落合内記と松風とである。
「どうやら大分夜が更けたようだ」
「さすがは山奥、ゾクゾクと胴顫いするほど寒いじゃないか」
「いや全く寒いなあ、雪の頃が思いやられる」
内記はちょっと憂鬱になったが、
「それはそうと、オイお銀、あの地丸をどう思う?」
「ねえ人丸さん、本当を云えば、妾アあの男には感心したのさ」
「実は俺も感心した」
「五分の隙もないと云うのは、ああいう男を云うのだろうよ」
「俺らをどう思っているだろうな?」
「さあそいつは問題だね」
「贋物と思っているだろうか?」
「そう思えばそうも思われる」
「しかし進物の十行李には、さすがに嬉しそうな顔をしたよ」
「そこが泥棒の浅ましさでね」
「こっちは贋物の心弱さか」
「狐狸の誑し合い、考えて見りゃア面白いよ。お前は女だ狢と行け」
「オヤ狢かえ、色気がないねえ」
「その色気で思い出した」急に内記――いや人丸は、興覚めたような顔をしたが、「おおおお、お銀、済まねえぞ済まねえぞ。さっきお前は地丸の野郎へ厭に色眼を使ったが、この納まりはどうしてくれる」