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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens

Aozora Bunko

ちょうどその時、

「御免下さい、銭形の親分さんはこちらで――」

門口から年配の女の声、平次の女房お静は取次に出た様子です。

「八、また誘拐らしいぜ」

「どうしてそんな事が判るんで、親分」

「女が二人連れで、こんなに早く御用聞の家へ来るのはよくよくの用事さ」

「へッ、当るも八卦という奴で」

八五郎はガチャガチャをやる真似をしました。

「金座の勘定役石井平四郎様の御召使が二人でお出でになりました」

お静が取次ぐのを待っていたように、

「とうとう俺の縄張内へやって来たのか、よしよしこの辺が乗出しの潮時だろう、丁寧に通すんだよ」

「ハイ」

引返したお静、間もなく二人の女を案内して来ました。

「始めて御目にかかります。私は金座の役人石井平四郎の雇人、霜と申します。御坊っちゃまの乳母をいたしておりました、これはお付きの小間使、春でございます」

挨拶をしたのは、四十二三のいかにも実直そうな女、その後ろに小さく控えたのは、十七八の大商人の召使らしい美しい娘です。

「平次は私で、――どんな御用でしょう」

「大変な事が起りました」

「坊っちゃんが誘拐されたんでしょう」

「えッ、ど、どうしてそれを」