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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens

Aozora Bunko

四

お月様は夜半にはなくなります」

平次は、薄暗い中で、そのまま腕を拱きました。

「八」

「ヘエ」

「もうたくさんだよ」

「そう言わずにもう少し、あとちょっとで框に届きますよ」

「馬鹿だな、そんな事をしたら雨戸は台なしだ、泥棒ごっこはもうたくさんだよ」

「そうですかね、こんなお手伝いならいつでもやりますよ」

「呆れた奴だネ」

四

「ところで番頭さん、あれだけの鋸引きが、聞えなかったのはどういうわけだろう。あんな大穴を二つもあけるには、どうしたって半刻(一時間)はかかるが」

平次には腑に落ちないことばかりです。

「それがネ親分、昨夜は狸囃子がひどくて、どうしても寝付かれなくって弱ったくらいですから、暁方になってぐっすり寝込んだのでございましょう。あんな大穴を開けるのを、目敏いのが自慢の私が知らないはずはありません」

番頭は妙な事を言い出します。

「狸囃子――?」

「え、本所七不思議の一つの狸囃子でございますよ。こんな場所ですから、狐や狸のいるに不思議はありませんが、近頃はそれも毎晩のようで、うっかりすると寝そびれて、暁方になってウトウトすることがございます」

「それは変った話を聞くものだな、本所の狸囃子というのは話の種にはなっているが、真当にそんなものがあるとは思わなかったよ」