Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分、お願いがあるんだが」
ガラッ八の八五郎は言いにくそうに、長い顎を撫でております。
「またお小遣いだろう、お安い御用みたいだが、たんとはねえよ」
銭形の平次はそう言いながら、立上がりました。
「親分、冗談じゃない。――またお静さんの着物なんか剥いじゃ殺生だ。――あわてちゃいけねえ、今日は金が欲しくて来たんじゃありませんよ。金なら小判というものを、うんと持っていますぜ」
八五郎はこんな事を言いながら、泳ぐような手付きをしました。うっかり金の話をすると、お静の頭の物までも曲げかねない、銭形平次の気象が、八五郎にとっては、嬉しいような悲しいような、まことに変てこなものだったのです。
「馬鹿野郎、お前が膝っ小僧を隠してお辞儀をすると、いつもの事だから、また金の無心と早合点するじゃないか」
「へッ、勘弁しておくんなさい――今日は金じゃねえ、ほんの少しばかり、智恵の方を貸して貰いてえんで」
ガラッ八は掌の窪みで、額をピタリピタリと叩きます。
「何だ。智恵なら改まるに及ぶものか、小出しの口で間に合うなら、うんと用意してあるよ」
「大きく出たね、親分」
「金じゃ大きな事が言えねえから、ホッとしたところさ。