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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
五
とガラッ八。
「その中に水が入っているだろう、ちょいと舐めてみてくれ」
「ヘエ――」
「ほんの少し塩っ辛いだろうと思うが」
平次は妙な事を言い出しました。
「あッ、これはやはり仏様の涙ですかい」
「そうだよ」
「恐ろしく涙を出したんだね」
五
「これは銭形の親分、御苦労様で」
小肥りの中年男が、丁寧に平次へ挨拶しました。
「お前さんは?」
「雲龍斎――え、その又六でございますが」
「あ、雲龍斎師匠でしたか、とんだ災難で」
「有難うございます、――この小屋も半分はお倉のお蔭で繁昌していたようなもので、当分代りを捜すまでは、人気を取戻せそうもありません」
「なアに、普賢菩薩の評判が大したものだから、そんな心配もありますまいよ」
「有難うございます」
「その人気を独り占めにしている菩薩様が少し汚れたようですね、あれはやはりサクラを使って泣かせるんでしょう――」
「親分、御冗談を」
又六は少し照れ臭い顔をしました。が、この顔には、どんな感情も紛れさせる、不断の微笑が、さざ波のように動いているのです。
「ところで師匠、お倉は勘兵衛の元の女房だという話ですが、お前さんそれを承知で雇いなすったかい」