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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
六
六尺の土塀の上に付いた血や、植込みの躑躅の枝が折れて、生湿りの土に深く型の付いたのなどは、その証拠だ」
恐ろしい半之丞の明察、――平次はお株を奪われてしばらく黙ってしまいました。が、やがて、心を落着けると、平次の日頃の叡智が蘇ります。
「下手人は左利きの男、力はあるが武家ではありません」
と平次。
「その通りだ。さすがは平次殿、それに一点の間違いもあるまい。長崎屋へ行って、左利きの力の強い男を捜すがいい、下手人はそれだ。多分まだ刃物を持っているかも知れない」
「…………」
皆川半之丞の言葉を後ろに聞いて、平次は長崎屋の裏口から真っ直ぐに乗り込んで行きました。
六
「何? 岡っ引が入って来た? 左利きの力の強い男がいないかと言うのか」
「それなら拙者だ、この伊坂権内、左利きの上に三人力だぞ」
長崎屋にゴロゴロしている浪人者が二人、事あれかしと裏口から飛んで出ました。
「お武家方じゃございません、奉公人のうちに、そんな人はいないでしょうか」
平次はおくれる色もありません。
「あったらどうする?」
と伊坂権内。
「番所まで来て貰います」
「何?」
「昨夜庭の隅で人を殺し、土塀越しに隣の庭へ投り込んだ者があります」