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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
六
六
翌る日一日、平次はガラッ八を鞭撻して、吉田一学の屋敷と、一学の娘百枝の嫁入り先、金助町の園山若狭の屋敷を探らせました。
「園山若狭様は一千五百石の大身だ。殿様は御病身で、世捨人も同様だというが、あの弟の勇三郎というのがうるさい。うっかり町方の御用聞が入ったと判ると、どんな眼に逢わされるかも知れないよ、用心するがいい」
「大丈夫ですよ、親分」
ガラッ八は探りにかけては名人でした。とぼけた顔と、早い耳とを働かせて、いつも平次が及ばぬところまで探りを入れます。
「俺はもう一度吉田一学様の屋敷を、外から探ってみる」
二人は手分けをして、それから丸一日の活躍を続けたのです。
日が暮れると、神田の平次の家へ、平次も八五郎も引揚げて来ました。お北は事件の成行きを心配して家を叔母のお村に頼んだまま、昼からここで待っております。
「親分、ひどい目に逢いましたぜ」
ガラッ八はよっぽど驚かされた様子で、報告も忘れてこんな事を言うのでした。
「殿様の弟の勇三郎に見付かったろう」
「いえ、――あれは猫の子のような人間で、屋敷の中へ紛れ込んだあっしを見付けても、ニヤリニヤリしていましたが、怖いのは用人の石沢左仲で、いきなり刀を抜いて追っかけるじゃありませんか、いや逃げたの逃げねえの」