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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
四
四
平次がすっかり緊張して、検屍の役人が来るまでの、たった四半刻(三十分)ばかりを、恐ろしく能率的に使いました。
「親分、あのお倉というのは、勘兵衛の元の女房だったそうですよ」
早耳のガラッ八は、ちょっと姿を隠した間に、これだけの事を聞き込んで来ました。
「どこでそんな事を聞き出したんだ」
「地獄極楽の活人形を彫った作人雲龍斎又六の弟子は皆んな知ってまさア」
「それを承知で、又六はあの小屋に使っていたのか、――勘兵衛と又六は商売敵で、恐ろしく仲が悪かったはずだが」
「又六はそんな事を知っていたか知らなかったか、とにかく弟子達がよく知っていて、師匠の又六が小屋へ出るたんびに、お倉へ優しい声をかけるのを、蔭で笑っていましたよ」
「そうか」
「そう解れば、勘兵衛を殺したのは、やはりお倉じゃありませんか」
とガラッ八。
「勘兵衛がお倉を殺すなら解っているが、お倉が勘兵衛を殺すのはどういう訳だ」
「世間じゃ、お倉が勘兵衛を捨てて飛出したって言うが、その実、勘兵衛がお倉を追出したのかも解りませんぜ」
「そんな事はどうでもいいが、――女が一人で若い男を袋叩きに出来るかい」
「袋叩きにしたのは他の者で、ヒョロヒョロになってここへ来たところをお倉が殺したとしたら?」